森を守ると水がおいしくなるの?森林と水の関係について

森を守ると水がおいしくなるの?森林と水の関係について

水は人間の体にとってなくてはならないものですので、安全でおいしい水を手に入れることは人類にとって共通の願いといえるでしょう。おいしくて安全な水を確保するために、森を保全する意義が注目されています。森を守ることと安全な水を確保することの間に、一体どのような関係があるのでしょう。

 

 

森が豊かな水を育てるしくみ

森林は光合成を行って酸素を供給したり、大気中に含まれている有害物質を吸着したりするほか、水をおいしくするなど多様な機能を果たしています。樹木のない更地では、雨が降ると雨水はそのまま地面を伝って流れだしますが、森林に降り注いだ雨は、葉に受け止められて段階的に土壌にしみこみます。豊かな森林の土壌は堆積した落ち葉や生物の働きで柔らかく、すきまの多い構造になっていますので、たっぷりと雨水を蓄えることができるのです。蓄えられた雨水は土壌で少しずつろ過されて地下水となって移動していきます。林野庁のホームページによると、滋賀県田上山の調査で、雨が大量に降った時の流水量を「森林」と岩や土が露出して草木がない「裸地」とで比較すると、森林では最も多い時の流水量が裸地の10分の1以下に抑えられたことが示されています(1)。水が森林の働きによってゆっくりとろ過され、蓄えられるようすは「緑のダム」と例えられることもあり、まさにイメージにピッタリのネーミングといえますね。

 

 

森の豊かさをはぐくむ有機物

森にはコンクリートの地面にはない、おいしい水をつくり出す働きがあります。森の土壌にしみこんだ水は、地中を移動していく間に少しずつろ過されていき、リンや窒素などの物質は土壌や植物に吸収されていきますので、人間にとってより安全な水に変化していくともいえるでしょう。森の中で安全でおいしい水が作り出されるサイクルの中で、大きな役割を果たしているのが土壌の有機物です。木々が地面に落とした葉は地面に少しずつ堆積していきます。堆積した植物の葉や根を土に住むダンゴ虫やミミズが食べて糞をすることで、土がふかふかになり耕されたような状態がつくられます。ふかふかで栄養分豊富な土壌は、さらに豊かな森林をはぐくみ、たっぷりと水を蓄えるサイクルを生み出しているといえるでしょう。

 

 

生き物の働きと森林の浄化機能

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森林の中に暮らす動物たちも森の中で大きな役割を果たしています。動物たちの糞は微生物によって分解され、土壌の栄養分として吸収されますし、糞に含まれている植物の種から新たな植物が芽生えることもあります。動物の死骸は小動物が食べたり、微生物が分解したりして栄養分となりますので、土壌の栄養分や生き物に活力を与えることになります。動物たちと森林はお互いに恵みを与えあいながら共存しているといえるのですね。ところで、野生動物の死骸や糞が水質に影響を与えるのではないかと心配になってしまう方もいるかもしれません。この疑問に答える調査として津脇晋嗣氏・高山範理氏の論文があります。この論文の中では、林地に数年にわたって1ヘクタールあたり合計約700kgの窒素を散布した調査について報告されており、窒素の流出量は1ヘクタールあたり30kgで、約4%にとどまることが分かったそうです(2)。高い浄化力があるとはいえ、あえて森林を汚染することがないよう私たちは保全に気を配り、おいしい水の恩恵にあずかり続けたいものです。

 

 

人手を加えることによる森林の再生について

森林を無計画に伐採してしまうと土砂が流出しやすくなり、雨水がろ過される前に流れ出してしまいます。こうした状態では土砂災害が起こりやすくなりますし、水質の低下も心配ですね。一度失われてしまった森林を人の手を加えることで再生させた取り組みもあります。例えば、北海道日高地方では昭和28年から計画的に襟裳岬の緑化事業が行われてきました。草木緑化面積が200haに近づいてきた昭和40年代から魚介類の水揚げ高が増えてきており、昭和27年の魚介類水揚高が72トンだったのが、平成3年には約29倍となる2,082トンに達し、平成13年には2,300トンを記録したとされています(3)。豊かな森林をはぐくむことが良質な水を生み出すことにつながり、良質な水が豊かな水産資源を育てることにつながっているのですね。森林をはぐくむことは一朝一夕の取り組みでは難しいものですが、こつこつと取り組むことで大きな恵みにつながると考えられます。

 

 

(1)林野庁、「水を育む森林のはなし」、http://www.rinya.maff.go.jp/j/suigen/suigen/con_1.html

(2)津脇晋嗣・高山範理「既存研究の整理による日本の森林の多面的機能に関する現状と課題」、2006年3月、11ページ、https://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/kanko/398-1.pdf

(3)株式会社神戸製鋼所 アルミ・銅カンパニー企画管理部、「INTERLINK」、「襟裳岬に春が来た、森林再生:さらに100年先へ、襟裳岬の緑化は次代に受け継がれている」2008年4月14日http://www.inter-link.jp/back_no/tokushu/tokushu21_1.html

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